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「こんなはずじゃなかった。と絶望している新入社員の貴方へ」

「こんなはずじゃなかった。と絶望している新入社員の貴方へ」

「こんなはずじゃなかった。と絶望している新入社員の貴方へ」新年度を迎えたと思ったら、あっという間にGWになりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。近頃、街で新入社員や就活生らしい格好をした方を見かける機会が増えたように思いますが、今年の新入社員はコロナ直撃の大学生活を過ごし、キャンパスに通ったのは最初の1年だけという世代です。大学生活においてはゼミで濃密な時間を過ごし、そこでキャリアの原点を築けた私にとって、オンラインだけの大学生活というのは想像するだけでも辛いものです。「今年の新入社員は…」というお悩みは、いつの時代も先輩社員の共通の悩みではありますが、せめて向こう3年の新入社員には、温かい眼差しと優しい手ほどきをしてあげて欲しいと願う今日この頃です。さて、今回の投稿は新社会人の方に届くといいなという願いを込めて、「こんなはずじゃなかった。と絶望している新入社員の貴方へ」というタイトルでお送りしたいと思います。今から15年前の2008年春、私も皆さんと同じように社会人になりました。大学時代、ゼミではグローバル人材戦略をテーマとして専攻し「日本企業のポテンシャルを引き出したい」という若手ながらの野心に燃えていた私は、外資メーカーの内定を辞退し、住友電工に入社しました。配属希望は、グローバルな活躍が見込める営業か人事にしていたのですが、辞令はなんと生産管理でした。勤務先は、本社でも海外でもなく、滋賀県の片田舎です。全く予想外のできごとに、辞令を受けた日は本当に絶望しました。しかし、思い返せばその工場で過ごした日々は、学生時代にゼミで過ごした日々と同様に私の原点となっています。当時、私が勤めた工場には、多くのブラジル人が派遣社員として働いていました。日本人らしからぬ風貌の私は、どうも彼らにとって親しみやすい存在だったらしく、着任初日から話しかけてもらえました。私はポルトガル語にはまったく明るくなかったので、何を言われているのかはさっぱりでしたが、毎日親しげに話しかけてくれた彼らのおかげで、徐々に意思疎通ができるようになりました。生産管理という業務の性質上、生産計画の立案や生産工程の最適化、需給予測や納期管理等が主業務であり、海外拠点や営業とのコミュニケーションを主とするため、必ずしも現場との関係構築は必要という訳ではありませんでした。しかし、そこには絆と温かみがあり、そして異国の地で懸命に生きる一人ひとりの人間ドラマがありました。これは座学では学べない味わい深さだったように思います。仕事に慣れ、愛着が湧いたことで「みんなのモチベーションを最大化し、良い工場にしていきたい」と目標を新たにしていた矢先、リーマンショックが襲いかかります。企業は生き残りを賭けて、大規模なリストラを実行しました。もちろん、住友電工も例外ではありませんでした。正社員は休業対象となりましたが、派遣社員は契約解除となりました。これが、後に社会問題となる「派遣切り」です。現場で仲良くなった当時18歳のブラジル人の少年に、「ヨウスケ、僕は明日で切られてしまう」と言われました。職がないから母国に帰らなければならないのに、「航空券を買うお金がないんだ」と途方に暮れている仲間もいました。半年間仲間として共に過ごしたにも関わらず、何ひとつ彼らにしてあげられない、入社半年の自分の無力さに苛立ちました。兼ねてから、私が人材やキャリアに強く関心を持っていたのは間違いありません。しかし、この出来事こそが、私が人材業をライフワークとしている最大の動機となっています。それから4年後、私はMBAを受験し、米国の複数の大学からオファーを頂きました。この詳細は以前投稿したため割愛しますが、この時、改めて自分のキャリアを棚卸し、人材業界に生きることが、自分らしい人生であると決断し、今に至ります。第二のキャリアとなったインテリジェンス(現パーソルキャリア)を離れ、自身の会社を立ち上げるまでになりました。今は日々、有難いことに様々な企業の採用戦略やブランディングに携わらせて頂いております。おそらく、私がかつてそうだったように「こんなはずじゃない配属」に苦しんでいる方は多いと思います。しかし、この世界に「面白い仕事と、つまらない仕事がある」のではなく、「面白いと思っている自分と、つまらないと思っている自分がいる」と捉え方を変えてみて下さい。かく言う私は、これをブラジル人の仲間たちに教えてもらったので、自分で気づいたわけではないのですが、この言葉が一人でも多くの新社会人に届いたらいいなと思います。そして、今置かれた環境での気付きや学び、怒りや悲しみが、貴方のライフワークの動機になる可能性があるということ、それを振り返ってみて初めて自身がおかれている環境の意味を理解することができるということを知っておいて欲しいと思います。15年早く社会人になった先輩からのささやかなメッセージでした。